相続した実家や使わなくなった空き家を取り壊すことになったとき、
- 解体費用は相続人の誰が払うのか
- 兄弟で均等に負担しなければならないのか
- 売主と買主のどちらが解体するのか
- 行政が解体した場合は無料なのか
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、空き家の解体費用は、基本的に解体工事を依頼する建物の所有者が負担します。
| 空き家の状況 | 主な費用負担者 |
|---|---|
| 所有者が自分で解体する | 現在の建物所有者 |
| 一人の相続人が家を取得する | 家を相続する人 |
| 複数の相続人で話し合い中 | 相続人同士の合意で決める |
| 共有名義の空き家を解体する | 共有者全員で負担割合を決める |
| 更地渡しの条件で売却する | 原則として売主 |
| 古家付き・現況渡しで売却する | 購入後に解体する買主 |
| 行政代執行で強制的に解体される | 所有者へ費用が請求される |
ただし、相続人が複数いる場合や共有名義の場合は、一人の判断だけで解体を進めるとトラブルになる可能性があります。
また、売却時の解体費用は、売買契約を更地渡しにするか、古家付き・現況渡しにするかで負担者が変わります。

費用を誰が払うかだけでなく、誰の同意で解体するのかも確認することが重要です。
この記事では、空き家の解体費用を誰が負担するのかを、相続、共有名義、売却などの状況別に解説します。

この記事の監修者
小野|不動産監修者
・不動産業界歴14年
・宅地建物取引士(宮崎県登録)
・FP2級
・取引実績:約300件
・専門分野:空き家売却・相続不動産・不動産査定・賃貸管理
不動産売買、売買仲介、賃貸管理業務に従事。
これまで約300件の不動産取引に携わり、空き家や相続不動産に関する相談・売却案件も多数担当。
本記事では実務経験と保有資格をもとに監修を行っています。
※相続関係、共有持分、売買契約などによって費用負担や必要な手続きは異なります。個別の権利関係については、不動産会社、司法書士、弁護士などへご相談ください。
空き家の解体費用は原則として所有者が払う

自分が所有する空き家を自分の判断で解体する場合は、原則として、その建物の所有者が解体費用を負担します。
解体業者との工事請負契約を結ぶ人が、契約上の支払義務を負うためです。
ただし、土地と建物の所有者が同じとは限りません。
最初に登記事項証明書などを確認し、次の点を整理しましょう。
- 建物の登記名義人
- 土地の登記名義人
- 相続登記が終わっているか
- 共有者がいるか
- 借地や第三者の権利が設定されていないか
土地を所有しているからといって、別の人が所有する建物を自由に解体できるわけではありません。
名義が亡くなった親や祖父母のままの場合は、解体業者へ依頼する前に、相続人と権利関係を確認します。
相続した空き家の解体費用は誰が払う?

相続した空き家の解体費用は、遺産分割の状況によって負担者が変わります。
一人の相続人が空き家を取得する場合
遺産分割協議によって、一人の相続人が土地と建物を取得する場合は、その人が解体費用を負担する方法が分かりやすいでしょう。
例えば、長男が実家を相続し、解体後の土地も長男が所有する場合です。
ただし、家を取得する相続人が解体費用を負担する代わりに、預貯金などほかの遺産の分け方を調整することも考えられます。
費用負担まで含めて相続人同士で合意し、遺産分割協議書などへ反映させておくと、後の認識違いを防ぎやすくなります。
相続人が複数いて遺産分割前の場合
誰が空き家を相続するか決まっていない段階で、一人の相続人が独断で解体するのは避けましょう。
建物を取り壊すと元に戻すことができず、空き家を利用したい相続人や、古家付きで売却したい相続人との間で争いになる可能性があります。
解体前に、相続人全員で次の内容を確認します。
- 本当に解体する必要があるか
- 現状のまま売却できないか
- 解体費用を誰が立て替えるか
- 最終的な負担割合をどうするか
- 解体後の土地を誰が取得するか
- 売却代金から費用を精算するか
一人が解体費用を立て替える場合は、支払金額、精算時期、領収書の保管方法なども書面で残しましょう。
遺産の預貯金から支払う場合
相続人全員が合意できれば、相続財産に含まれる預貯金から解体費用を支払う方法を検討できる場合があります。
ただし、故人名義の口座から自由に引き出せるわけではなく、金融機関所定の相続手続きが必要です。
また、遺産から支払った金額は、ほかの相続財産の分け方にも影響します。
相続人の一人だけで判断せず、全員の合意を得てから進めてください。
共有名義の空き家は共有者全員の同意を確認する
空き家が兄弟や親族との共有名義になっている場合は、費用負担だけでなく、解体への同意も必要です。
建物をすべて取り壊す行為は、共有物の形状や効用を大きく変える行為です。
民法では、共有物に大きな変更を加える場合、ほかの共有者の同意を得ることが原則とされています。
共有に関する基本的な規定は、e-Gov法令検索の民法で確認できます。
自分の持分が過半数を超えていても、一人の判断だけで建物全体を解体するのは避けてください。
費用負担は持分だけで機械的に決めない
共有物に関する負担は、持分割合が一つの基準になります。
例えば、持分が2分の1ずつなら、解体費用も半分ずつ負担する方法が考えられます。
ただし、実際には次のような事情によって負担割合を変えることもあります。
- 一人の共有者だけが解体後の土地を取得する
- 一人が長期間空き家を使用していた
- 解体後に土地を売却して費用を精算する
- ほかの相続財産との調整がある
- 一人の共有者が解体費用を立て替える
持分割合、支払時期、売却代金からの精算方法を共有者間の合意書に残しておくことが大切です。
共有者と連絡が取れない場合
共有者の一人が行方不明、連絡拒否、認知症などの事情で話し合えない場合は、通常の解体手続きだけでは進めにくくなります。
所在等不明共有者に関する裁判手続きや、成年後見制度などが関係する可能性があります。
解体業者だけで解決できる問題ではないため、司法書士や弁護士へ相談してください。
空き家を売却するときは売主と買主のどちらが払う?
売却予定の空き家では、売買契約の条件によって解体費用を負担する人が変わります。
| 売却方法 | 一般的な負担 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 更地渡し | 売主が解体 | 引き渡しまでに工事を完了する |
| 古家付き土地 | 買主が購入後に解体 | 解体費用を含めて価格交渉される場合がある |
| 現況渡し | 契約内容による | 建物・家財・付属物の扱いを明記する |
| 買取 | 買取会社が購入後に解体する場合がある | 解体費用が買取価格に反映される可能性 |
更地渡しでは売主が解体費用を払う
更地渡しとは、売主が建物を解体し、土地だけの状態にして買主へ引き渡す契約です。
売主が解体業者へ工事を依頼するため、原則として売主が解体費用を支払います。
契約前に、次の内容を確認しましょう。
- 解体する建物や付属物の範囲
- 庭木、塀、物置、井戸などの扱い
- 地中埋設物が見つかった場合の負担
- 解体完了の期限
- 工事が遅れた場合の対応
- 建物滅失登記を誰が行うか
解体費用が想定以上に高くなると売却後に残る金額が減るため、売買契約前に見積もりを取ることが重要です。
古家付き土地では買主が解体する
建物を残したまま古家付き土地として売却し、購入後に買主が解体する方法もあります。
この場合、解体業者へ直接費用を支払うのは買主です。
ただし、買主は購入代金に加えて解体費用を負担するため、その金額を考慮して価格交渉を行う可能性があります。
そのため、売主が解体費用を支払わなくても、売却価格が低くなることで、実質的に費用の一部を負担する形になる場合があります。
売主が解体する場合と、古家付きで売る場合の手取り額を比較して判断しましょう。
不動産会社の買取では解体せず売れる場合がある
老朽化した空き家でも、不動産会社が建物付きで買い取り、購入後に解体する場合があります。
売主が先に解体費用を用意しなくてもよい点はメリットですが、買取会社は次の費用を考慮して価格を決めます。
- 建物の解体費用
- 家財や残置物の処分費用
- 測量や境界確認の費用
- 購入後の維持管理費
- 再販売にかかる費用やリスク
仲介価格より買取価格が低くなることもあるため、解体費用だけでなく、最終的な手取り額と手間を比較してください。
土地と建物の所有者が違う場合は誰が払う?

借地上に建つ空き家など、土地と建物の所有者が異なるケースもあります。
基本的には、建物を所有している人が建物の解体を行います。
ただし、借地契約が終了するときに建物を撤去して土地を返す義務があるかなど、契約内容によって進め方が変わります。
確認したい内容は次のとおりです。
- 土地と建物それぞれの登記名義
- 借地契約の期間と終了条件
- 更地にして返す約束があるか
- 地主が建物を引き取る合意があるか
- 解体工事で土地を使用する許可
契約書だけでは判断できない場合は、土地所有者と話し合い、不動産会社や弁護士へ相談しましょう。
行政が空き家を解体しても費用は無料にならない
倒壊などの危険が高い空き家を放置すると、市区町村から特定空家等として助言、指導、勧告、命令を受ける場合があります。
命令に従わず、行政代執行によって強制的に解体された場合でも、解体費用を行政が無償で負担してくれるわけではありません。
行政代執行にかかった費用は、原則として空き家の所有者から徴収されます。
行政が依頼する工事では、所有者が複数の解体業者を比較して選べるとは限りません。
危険な状態になる前に、自分で相談や見積もりを進めることが重要です。
空き家対策と行政による措置については、政府広報オンラインの空き家対策に関する解説でも確認できます。
解体費用の負担を決める前に見積もりの範囲を確認する
相続人や共有者で費用を分ける場合は、解体工事本体だけでなく、関連費用をどこまで含めるか確認します。
| 費用項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 建物の解体費用 | 本体の取り壊し、分別、運搬、処分 |
| 付帯工事費 | 塀、物置、庭木、カーポートなどの撤去 |
| 家財処分費 | 家具、家電、衣類、生活用品などの処分 |
| 石綿関係の費用 | 事前調査、分析、該当建材の除去 |
| 地中埋設物の撤去費 | 古い基礎、浄化槽、井戸、廃材など |
| 整地費用 | 解体後の土地を平らに整える作業 |
| 登記費用 | 建物滅失登記を専門家へ依頼する場合 |
最初の見積金額だけを分担しても、工事中に追加費用が発生すると再び話し合いが必要になります。
相続人や共有者の間で、次の内容まで決めておきましょう。
- どの見積書を採用するか
- 追加費用の負担割合
- 補助金を受け取った場合の精算方法
- 売却代金から差し引く費用の範囲
- 立替金を返す時期

解体する前に工事費用を確認
解体費用は、建物の構造や面積、道路幅、家財、庭木、塀、地中埋設物などでも変わります。
\ 無料で解体費用を確認する /※見積金額は建物・敷地・地域などの条件によって異なります。
空き家の解体費用を準備する方法

相続人・共有者で分担する
相続人や共有者が複数いる場合は、持分や解体後の土地の取得方法を踏まえて費用を分担します。
一人がまとめて解体業者へ支払い、後からほかの人へ請求する方法もあります。
ただし、口約束だけでは「支払うとは言っていない」「その業者には同意していない」と争いになる可能性があります。
工事前に見積書を全員で確認し、負担金額と支払期限を書面に残してください。
売却代金から精算する
解体後に土地を売却する予定なら、一人が費用を立て替え、売却代金から返してもらう方法があります。
例えば、土地の売却代金を分ける前に、解体費用や仲介手数料などを差し引き、残額を相続人や共有者で分配します。
この場合も、差し引く費用と分配方法を事前に合意しておくことが必要です。
自治体の解体補助金を確認する
空き家の所在地によっては、市区町村の解体補助金を利用できる場合があります。
対象になりやすいのは、老朽化や倒壊の危険がある空き家などですが、条件は自治体によって異なります。
- 建物の老朽度
- 申請者の所有関係
- 税金の滞納の有無
- 所得要件
- 指定業者の利用
- 解体後の土地利用
などが確認される場合があります。
解体工事を契約・着工した後では申請できない制度もあるため、必ず工事前に自治体へ確認してください。
国土交通省も、空き家を解体するときは市区町村の補助制度を確認するよう案内しています。
詳しくは、国土交通省の空き家対策特設サイトを確認してください。
建物を解体せずに売却する
解体費用を準備できない場合でも、必ず自分で建物を取り壊さなければならないわけではありません。
- 古家付き土地として仲介で売る
- 建物を修繕して利用したい人を探す
- 不動産会社の買取を利用する
- 隣地所有者へ売却する
といった方法もあります。
解体前に、現在の状態で売れるかを不動産会社へ確認しましょう。
売却のために負担した解体費用は譲渡費用になる場合がある

土地を売却するために建物を解体したことが明確な場合、解体費用が譲渡所得を計算するときの譲渡費用に含まれる場合があります。
譲渡所得は、一般的に次のように計算します。
売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除=課税対象となる譲渡所得
売却のために直接支払った解体費用を譲渡費用として差し引ければ、課税対象となる所得が小さくなる可能性があります。
一方、売却の予定が明確でない段階で解体した場合などは、同じ扱いにならない可能性があります。
解体工事の請負契約書、見積書、領収書、売買契約書などを保管し、税務署や税理士へ確認してください。
譲渡費用の範囲については、国税庁の譲渡所得の計算方法でも確認できます。
空き家の解体費用を決めるときに避けたい失敗
相続人の一人だけで解体を決める
自分が管理している空き家でも、単独所有とは限りません。
ほかの相続人が利用や売却を希望している場合、無断で解体するとトラブルになります。
名義、相続人、共有者を確認し、全員の合意を得てから契約してください。
解体費用だけを決めて追加費用を考えない
工事中に地中埋設物や追加の処分物が見つかることがあります。
見積金額だけを分担し、追加費用の扱いを決めていないと、工事途中で支払いが止まる可能性があります。
追加費用が発生する条件と上限、負担割合を確認しましょう。
売却査定を受けずに先に解体する
建物が古くても、古家付き土地やリフォーム用物件として売れる可能性があります。
また、接道条件などによっては、建物を解体した後に新しい建物を建てられない場合もあります。
現状の査定額、解体費用、解体後の土地価格を比較してから判断してください。
補助金を確認せず工事を始める
補助制度の対象になる空き家でも、申請前に契約や工事を始めると対象外になることがあります。
解体業者を決める前に、市区町村の空き家担当窓口へ確認しましょう。
空き家の解体費用についてよくある質問
兄弟の一人が解体費用を払わない場合はどうしますか?
費用を払わない人がいるからといって、ほかの共有者だけで解体を進めてよいとは限りません。
解体への同意と、費用負担の問題を分けて整理する必要があります。
費用を立て替える場合は、返還時期や売却代金からの精算方法を書面で決めてください。
合意できない場合は、司法書士や弁護士への相談を検討します。
売主が解体費用を払わずに売却できますか?
古家付き土地や現況渡しとして売却できれば、売主が解体せずに引き渡せます。
ただし、買主が負担する解体費用を考慮し、売却価格の値下げを求められる場合があります。
更地渡しと古家付き売却の手取り額を比較してください。
相続登記前でも解体できますか?
名義が故人のままでも、相続人を確認して手続きを進められる場合はありますが、一人の判断だけで解体するのは避けるべきです。
相続人全員の確認、解体工事の契約者、建物滅失登記などの手続きが関係します。
工事契約前に司法書士や土地家屋調査士へ確認してください。
解体補助金で費用を全額払えますか?
補助金を利用できても、解体費用の全額が支給されるとは限りません。
補助率、上限額、対象工事、対象者などは自治体によって異なります。
補助対象外となる家財処分や外構撤去などが含まれる場合もあるため、自己負担額を確認しましょう。
行政代執行なら費用を払わなくてよいですか?
行政代執行による解体でも、原則として費用は所有者へ請求されます。
行政が解体するまで待つ方法は、費用を免れる手段にはなりません。
まとめ|解体費用は所有関係と契約条件を確認して決める
空き家の解体費用は、基本的に建物の所有者が負担します。
ただし、状況によって負担者は次のように変わります。
- 一人で所有している場合は、その所有者が負担する
- 相続人が複数いる場合は、全員で負担方法を決める
- 共有名義の場合は、共有者全員の同意を確認する
- 更地渡しでは、原則として売主が負担する
- 古家付き土地では、購入後に買主が負担する
- 行政代執行でも、所有者へ費用が請求される
解体は一度行うと元に戻せません。
所有者、相続人、共有者を確認し、現状査定と解体見積もりを比較してから判断することが大切です。
複数人で費用を負担する場合は、負担割合、追加費用、立替金、売却代金からの精算方法まで書面に残しましょう。


この記事を書いた人
地方生活サポートハウス編集部
地方暮らしや住宅メンテナンス、
空き家管理に関する情報を発信しています。
実体験や専門家監修をもとに、
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