実家を相続したものの、遠方に住んでいる、誰も住む予定がない、売るか残すか決められないなどの理由で、そのままになっている方もいるでしょう。
しかし、相続した実家を長期間放置すると、建物が傷むだけではありません。雑草・庭木による近隣トラブル、不法侵入、火災、倒壊、税負担、さらに管理不全空家や特定空家として行政から対応を求められる可能性もあります。

相続した実家で避けたいのは、「まだ決められないから」と管理まで止めてしまうことです。売るか残すかを決めるまでの間も、最低限の管理は続けましょう。
| 放置による主なリスク | 起こり得ること |
|---|---|
| 建物の劣化 | 雨漏り・腐食・カビ・シロアリなどが進む |
| 庭・敷地の荒廃 | 雑草・庭木の越境、害虫・害獣、近隣トラブル |
| 防犯・火災 | 不法侵入、不法投棄、放火などのリスク |
| 第三者への被害 | 屋根材・外壁・塀・庭木などによる事故 |
| 税金・維持費 | 固定資産税や管理・修繕費の負担が続く |
| 行政上の措置 | 管理不全空家・特定空家への指導や勧告など |
| 資産価値 | 状態悪化によって売却・活用しにくくなる |
この記事では、相続した実家を放置するとどうなるのかを中心に、法律・税金面の注意点と、遠方で管理できない場合の対処法まで解説します。

この記事の監修者
小野|不動産監修者
・不動産業界歴14年
・宅地建物取引士(宮崎県登録)
・FP2級
・取引実績:約300件
・専門分野:空き家売却・相続不動産・不動産査定・賃貸管理
不動産売買、売買仲介、賃貸管理業務に従事。
これまで約300件の不動産取引に携わり、空き家や相続不動産に関する相談・売却案件も多数担当。
本記事では実務経験と保有資格をもとに監修を行っています。
※空き家の法的責任、相続、税金、行政上の措置は個別の状況によって異なります。本記事では一般的な考え方を解説しています。具体的な問題が生じている場合は、市区町村、司法書士、弁護士、税理士、不動産会社などへご相談ください。
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誰も住んでいない家でも、所有しているだけで状態が維持されるわけではありません。人が暮らしている家では自然に行われている換気、通水、清掃、庭の手入れ、異常の早期発見などが、空き家では止まりやすくなります。
その結果、小さな雨漏りや破損に気付かないまま時間が経過し、修繕範囲が広がることがあります。庭や敷地も同じで、数か月の間に雑草や竹、庭木が大きく伸びることがあります。

土地所有者が対応できないため、こちらで草刈りをすることに。
重要なのは、「今すぐ売るか決められない」ことと「何も管理しない」ことは別だという点です。今後の方針が決まるまでの間も、最低限の管理体制は必要です。
相続した実家を放置する主なリスク
建物の劣化が進み修繕費が増える
空き家では、雨漏りや給排水の異常、外壁・屋根の破損などを発見する人がいません。湿気がこもればカビや木材の腐食につながり、シロアリなどの被害が広がる可能性もあります。
劣化が進むと、将来住もうと思ったときに大規模な修繕が必要になったり、売却時に建物の評価が下がったりすることがあります。
雑草や庭木が近隣トラブルにつながる

フェンスを越えて敷地側へ竹が侵入しています。
庭や敷地を放置すると、雑草の繁茂、庭木の越境、落ち葉の飛散、害虫・害獣などが近隣へ影響することがあります。道路側へ枝が伸びれば通行の妨げになることもあります。

私も自宅の隣にある空き地で、雑草や竹が伸びて敷地側へ入ってくる問題を経験しました。所有者の許可をもらい、自分で草刈りをしたことがあります。
相続人本人は遠方に住んでいて状況を見ていなくても、近隣住民は日常的に影響を受けます。建物より先に、庭や敷地の管理が問題になるケースもあるため注意が必要です。
雑草対策については、空き家の雑草対策で具体的に解説しています。
不法侵入・不法投棄など防犯上のリスクが高まる
長期間人の出入りがなく、郵便物がたまっていたり庭が荒れていたりすると、外から空き家だと分かりやすくなります。不法侵入、不法投棄、盗難、いたずらなどのリスクが高まるため、戸締まりと定期的な見回りが必要です。
詳しい対策は、空き家の防犯対策も参考にしてください。
火災・放火のリスクがある
空き家でも、電気設備の異常や放火などによって火災が発生する可能性があります。周囲に燃えやすいごみや枯れ草が多い状態も避けたいところです。
火災の損害賠償については「失火責任法があるから、空き家所有者は何があっても責任を負わない」わけではありません。失火責任法は、失火について民法709条の責任を原則として制限しつつ、重大な過失がある場合を例外としています。
一方、建物の設置・保存の不具合によって他人へ損害が生じた場合には、民法717条の工作物責任が問題になることもあります。実際の責任は火災原因や建物の管理状況などによって異なるため、個別判断が必要です。
参考:e-Gov法令検索「失火ノ責任ニ関スル法律」/e-Gov法令検索「民法」
屋根・外壁・塀・庭木などが第三者へ被害を与えることがある
老朽化した屋根材や外壁が落下したり、塀が倒れたり、庭木が倒れて他人へ損害を与えたりする可能性もあります。民法717条では、土地の工作物の設置・保存に瑕疵があり他人へ損害が生じた場合の占有者・所有者の責任が定められています。
台風や大雨のあとなどは、遠方の実家でも外観だけは早めに確認できる体制を作っておくと安心です。
固定資産税・管理費・修繕費の負担が続く
誰も住んでいなくても、所有している間は固定資産税などの負担が続きます。さらに草刈り、庭木の剪定、火災保険、修繕、管理サービス、遠方からの交通費などが発生することがあります。
つまり、空き家は「使っていないから費用がかからない家」ではありません。利用予定がない状態が長くなるほど、維持費だけが積み重なることがあります。
固定資産税の仕組みについては、空き家の固定資産税はいくら?住宅用地の特例と税負担が増えるケースで詳しく解説しています。
資産価値が下がり売却しにくくなることがある
空き家の状態が悪化すると、修繕を前提に購入する人しか検討できなくなったり、建物ではなく土地として評価されたりする可能性があります。
「数年後に売ればいい」と考えていても、その間に劣化が進めば選べる売却方法が減ることがあります。今後住む予定がない場合は、早い段階で査定だけでも受けて現在の価値を知っておく方法があります。
放置すると管理不全空家・特定空家になる可能性がある
空き家を適切に管理しない状態が続くと、市区町村から管理不全空家等や特定空家等として対応を求められる可能性があります。
| 区分 | 概要 | 主な行政対応 |
|---|---|---|
| 管理不全空家等 | そのまま放置すれば特定空家等になるおそれが大きい状態 | 指導 → 勧告 |
| 特定空家等 | 倒壊等の危険、衛生上有害、景観を著しく損なうなど放置が不適切な状態 | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行 |
2023年12月に施行された改正空家法では、特定空家になる前の段階から管理を促すため、管理不全空家等への指導・勧告制度が設けられました。
重要なのは、「何年間放置したら自動的に特定空家になる」という決まりではないことです。建物や敷地の状態、周囲への影響などを踏まえて市区町村が判断します。
参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
管理不全空家と特定空家の違いや指定の流れは、特定空家とは?指定基準・管理不全空家との違いで詳しく解説しています。
管理不全空家・特定空家になると固定資産税に影響することがある
住宅が建っている土地では、一定の要件を満たすと固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地の特例が適用されています。
しかし、管理不全空家等または特定空家等について市区町村長から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外れる場合があります。
小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が価格の6分の1とされるため、この特例が外れる影響は小さくありません。ただし、「空き家を放置すると固定資産税が必ず6倍になる」という意味ではありません。建物分の税額、評価額、負担調整、自治体の課税状況なども関係するため、実際の税額は個別に異なります。
国土交通省も、勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等について住宅用地特例の対象から除外される仕組みを案内しています。
詳しくは、空き家の固定資産税をご覧ください。
危険な特定空家は行政が取り壊すこともある
特定空家等に対して必要な措置を求められても改善されない場合、市区町村長は法律上の手続きを経て命令や行政代執行を行うことがあります。
また、倒壊しかけた屋根など緊急性が高い特定空家では、改正空家法により緊急代執行ができる制度も設けられています。行政が代わりに除却したからといって費用が無料になるわけではなく、代執行費用が所有者等から徴収される場合があります。
参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」
行政が取り壊してくれるまで放置する方法は、空き家処分の選択肢にはなりません。危険な状態になる前に、修繕・売却・解体などを検討することが重要です。
実家の相続登記も放置しない
建物の管理だけでなく、相続手続きそのものを放置することにも注意が必要です。2024年4月から相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った場合は、原則としてその取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
相続人が兄弟など複数いる場合、誰が取得するのか決まらないまま時間が経つと、次の相続が発生して権利関係がさらに複雑になることもあります。
相続登記、兄弟など相続人が複数いる場合、税金などについては、空き家を相続したら何をする?相続登記・税金・管理・売却まで解説でまとめています。
遠方の実家を放置しないための対処法
実家が遠く、自分で頻繁に確認できない場合でも、放置以外の方法があります。今後の方針が決まるまでは、無理なく続けられる管理方法を選びましょう。
自分で定期的に確認する
- 玄関・窓の戸締まり
- 郵便物の回収
- 室内の換気・通水
- 雨漏りや外壁・屋根の異常確認
- 雑草・庭木の確認
- 不法投棄や侵入跡の確認
管理頻度は物件の状態や季節、地域によって変わります。「何か月に1回なら絶対に大丈夫」と決めるのではなく、雑草の成長が早い時期や台風・大雨の後などは追加で確認する方が安全です。
自主管理の具体的な方法は、空き家を自分で管理する方法をご覧ください。
兄弟・親族と管理を分担する
兄弟姉妹や親族が実家の近くにいる場合は、見回り、郵便物、庭の管理などを分担する方法があります。
ただし、「誰が行くか」「草刈りや修繕費を誰が払うか」「いつまで管理を続けるか」を曖昧にすると、親族間の不満につながることがあります。できれば役割と費用負担を具体的に決めましょう。
空き家管理サービスを利用する

自分や親族で管理できない場合は、空き家管理サービスを利用する方法があります。巡回、換気、通水、郵便受けの確認、庭の状態確認、写真報告など、対応内容は会社やプランによって異なります。
費用とサービス内容を比較する場合は、空き家管理の費用、空き家管理サービスのメリット・デメリットも参考にしてください。
今後住まない実家は売却・活用・解体も検討する

管理を続けることは、将来住む予定がある場合や、すぐに判断できない事情がある場合には必要です。一方で、誰も住む予定がなく管理負担だけが続いているなら、早めに出口を考えた方がよいこともあります。
| 今後の方法 | 考え方 |
|---|---|
| 売却する | 管理・税負担を終わらせたい場合の有力な選択肢 |
| 賃貸・その他の活用 | 建物状態と地域需要が見込める場合に検討 |
| 解体する | 危険性が高い場合など。ただし費用・税金・売却への影響を先に比較 |
| 一定期間管理する | 将来利用する可能性があり、管理体制を維持できる場合 |
まだ「売る・貸す・解体する」のどれがよいか決めていない場合は、いらない空き家を処分する方法で、売却・買取・空き家バンク・解体・譲渡などを比較できます。
空き家を残して活用したい場合は、空き家の活用方法5選を参考にしてください。
古い実家でも先に解体しない
建物が古いからといって、売却前に必ず解体する必要はありません。古家付き土地として売れる場合もあり、先に解体すると解体費用が発生するほか、住宅用地の特例が外れて固定資産税の負担が変わる可能性があります。
まず現状のまま査定し、空き家は解体してから売る?そのまま売却?で費用・税金・手取りを比較してから判断しましょう。解体費用は空き家の解体費用で詳しく解説しています。
実家を相続したくない場合も「放置」では解決しない
「誰も実家を継がないから、そのままにしておけばよい」と考えるのは避けましょう。相続したくない場合には相続放棄という制度がありますが、家庭裁判所への手続きが必要で、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期限があります。
また、空き家だけを放棄して預貯金などほかの財産を相続することはできません。相続放棄後の空き家の保存義務も、放棄時に現に占有しているかなどによって扱いが変わります。
相続放棄を考えている場合は、空き家を自分の判断で解体したり、遺品・家財を大量に処分したりする前に専門家へ相談してください。相続放棄の概要は、空き家を相続したら何をする?でも解説しています。
相続した実家で避けたいこと
- 名義や相続人を確認しないまま放置する
- 兄弟の誰かが管理するだろうと役割を決めない
- 雨漏りや庭木の越境などを知りながら対応しない
- 売却価格を調べず、高額なリフォームや解体を先に行う
- 相続放棄を検討しているのに、期限や財産の扱いを確認しない
特に「今後どうするか決まっていない」という理由だけで、管理と手続きを両方止めてしまうのが危険です。方針決定は後でも、現状確認・最低限の管理・必要な相続手続きは先に進めると考えましょう。
相続した実家の放置についてよくある質問
何年放置すると特定空家になりますか?
「○年放置したら自動的に特定空家になる」という全国共通の年数はありません。建物の危険性や衛生、景観、周辺の生活環境への影響などを踏まえて市区町村が判断します。特定空家になる前に管理不全空家等として指導・勧告を受ける場合もあります。
空き家で火事が起きたら所有者がすべて賠償しますか?
火災の原因や過失の程度、建物の状態などによって異なるため一律には言えません。失火責任法では通常の失火について民法709条の責任が制限されていますが、重大な過失がある場合は例外です。また、建物の設置・保存上の問題では民法717条が問題になる可能性もあります。
相続した実家を放置すると固定資産税は6倍になりますか?
必ず6倍になるわけではありません。ただし、管理不全空家等または特定空家等として勧告を受けると、敷地が住宅用地特例の対象から外れる場合があります。実際の税額は土地の評価額や建物分の税額などによって異なります。
行政が空き家を勝手に取り壊すことはありますか?
危険な特定空家等について、法律に基づく手続きを経たうえで行政代執行が行われることがあります。緊急性が高い場合には緊急代執行の制度もあります。費用が所有者等から徴収される場合があるため、行政による除却を待つ方法はおすすめできません。
遠方で実家を管理できない場合はどうすればいい?
親族に見回りを頼む、空き家管理サービスを利用する、今後住まないなら売却や活用を検討するなどの方法があります。距離や交通費も含め、継続できる方法を選びましょう。
相続放棄すれば実家を放置しても大丈夫ですか?
一律には言えません。相続放棄時にその家を現に占有している場合などは、引き渡しまで保存義務が問題になることがあります。また、相続放棄には原則3か月の期限があります。個別事情によって判断が変わるため、弁護士・司法書士などへ確認してください。
まとめ|相続した実家は「決められない間」も放置しない
相続した実家を放置すると、次のようなリスクがあります。
- 建物の劣化と修繕費の増加
- 雑草・庭木・害虫などによる近隣トラブル
- 不法侵入・不法投棄・火災などの防犯リスク
- 屋根や塀などによる第三者への被害
- 固定資産税や管理費の負担
- 管理不全空家・特定空家として行政対応を受ける可能性
- 資産価値が下がり売却・活用しにくくなる可能性
大切なのは、売るか残すかをすぐ決められなくても、管理まで止めないことです。相続人・名義を確認し、自分や親族で管理するのか、管理サービスを利用するのかを決めましょう。
今後住む予定がない場合は、「とりあえず保有」を長く続けるのではなく、いらない空き家を処分する方法で手放し方を比較してみてください。
空き家相続そのものの手続きから確認したい方は、空き家を相続したら何をする?相続登記・税金・管理・売却まで解説から順番を整理できます。
※空き家の法的責任、行政措置、相続放棄、税金などは個別事情によって異なります。実際に危険な状態になっている場合や、近隣から苦情を受けている場合は、早めに市区町村や専門家へご相談ください。

この記事を書いた人
地方生活サポートハウス編集部
地方暮らしや住宅メンテナンス、
空き家管理に関する情報を発信しています。
実体験や専門家監修をもとに、
分かりやすい情報提供を心がけています。

